2018 注文靴の全て – 1

タイトルに惹かれて辿り着いた方には申し訳ないのですが、ここでは基本的に高級ブランドの話はしません。

例えば、ロイヤルワラントを持つロブロンドン、そのパリ工場を買い取ったエルメスロブ、90年代あたりから日本での受注が開始されたクレバリー、2000年以降に増えた日本の若手職人たち。
そういった所の話題はなしです。

この辺は全てBuild to Oder(ビスポーク/フルオーダー)という注文方法ですが、ここで話題にするのはもっと簡便にコスト重視なパターンオーダーという奴です。

ビスポーク靴というのはクライアントの足を計測(色んな計測方法がメゾン/工房にはあります)し、ラスト(木型)を削り出し、仮靴を経て修正を加え仕立てるというものです。
※因みにロブロンドンには仮靴はありません。完全にフィットしたものにするためには何足も作る必要があります。

翻ってパターンオーダーでは基本的にラストは出来あい(レディメイド)の物を修正して使用します。
ビスポークを謳っていても既成ラストを使っているところは多く、但し修正範囲は広くなります。
一から削り出すよりは効率的です。




何故こんな内容を書こうと思ったか?
それは楽天で”MACERETO”というオーダーブランドを見付けたからです。

写真を見ると中々綺麗な靴です。(トップ画像の通称アデレードタイプののものは一例です)

しかし、書いてる説明が何だかおかしい。
そして、丹念に検索して見ると2か所のショップで扱いがあるのですが、大きく価格差がある。
更に調べました。
そこで判明したのが、朝鮮(南の方だとは思う)製のブランドであるということです。

ならば国産で同じような低価格オーダーは無いのかしら?と検索を進めていくと、幾つか見つかりました。

一長一短。

靴に出す金は惜しまないぜという方には物足りなかろうが、単に既成靴ではフィッティングに難がある程度の方には朗報と言えそうな話です。

さて、それでは書き進めてまいりましょう。
長くなりそうなので次回2に進みます。


ハンドメイドにおすすめの書籍


ハンドメイドに関する書籍の紹介です。
絶版も含みますので、オークションなどで入手するのも一手かと思います。

以下フラットテーラリング
Sewing Classic Clothes That Fit
Classic Tailoring Techniques: AConstruction Guide for Men’s Wear
Classic Tailoring Techniques for Menswear: A Construction Guide
Making Trousers for Men & Women: A Multimedia Sewing Workshop

以下ハンドメイドシューズ
Handmade Shoes for Men
手縫い靴のすべて
製靴書‐ビスポーク・シューメイキング: オーダーからその製作技術と哲学まで
紳士靴を仕立てる (Professional Series)
上2つは持っていて、良い本だと思います。
下2つは持ってませんが、恐らくこれから独学で靴を作っていきたいという人は一番下のやつを手に入れると良いだろうと思います。
但し、”盤石糊”なんて言葉に萌えてしまうような方なら、まずはヴォーシュ本ですね。

因みに、「ハンドメイドシューズフォーメン」は新海誠「言の葉の庭」に出てきた書籍です。

言の葉の庭は確か婦人靴のダイアナが協力してたと思うので、この主人公にはあまり関係のない本だと思います。
まあ演出上は美しいですね。

靴ヲタクにもオッと思わせるなら「手縫い靴のすべて」一択なのにと残念に思います。
新海演出の残念な部分が端的に見えてしまう。

仮の引っ越し先から移動加筆投稿



私たちホームメイドシューメイカーは少なからずLaszlo Vass – ラズロヴォーシュの弟子だと言えよう。
東欧ブダペストでイングリッシュウェルテッドの靴を作るVASSを取材して書かれた”Handmade Shoes for Men”は世界各国の靴好きたちにとってマニュアルでありリファレンスとなった。

ありがとうラズロ。

貴乃花の息子”花田優一くん”も靴職人を目指しているらしいが、きっと彼もラズロの弟子だね。
(まあ彼の作った靴をグーグル画像検索して確認すると、「こりゃあモゲだわ」と思いますけど。
シューメイキング ワークショップ・モゲ)

Vass Shoes
自分が靴を作り始めた15年ほど前にはVASSのwebサイトなんか無かった。
オンラインショップでは5万円弱でレディメイドのvassが買える。
今の靴好きは恵まれておるよ。


ベルギーの老舗帽子ブランドHERMAN

ベーメルのパティーヌ

[パティーヌ] ブログ村キーワード[ベーメル] ブログ村キーワード

先日のTX和風総本家で、ステファノベーメルでのパティーヌが紹介されていたのでメモ。
コロンブスのアルコール染料を使ってた。
メルトダイナーか?

現在メルトダイナーは廃盤になったらしく、クラフトダイナーってのを販売しています。
こんな感じ

もっと安い染料が沢山あるのにコロンブス使っているのは、これが良いからなんでしょうかね?

仮の引っ越し先から移動投稿


Patine (cuir)
Stefano Bemer
ステファノベーメルの靴は本当に美しい。

イタリアでcobbler(靴修理人)を経験する中で、修理に持ち込まれる古い技術で作られたクォリティの高い靴から、現代では失われた技術を習得し後の靴作りに生かした。

要約するとそういう靴職人です。

コストを考えるとどれだけ手を抜くかというのは重要な話ですから、そこに意味を見出して昔ながらに作る職人と、コストを飲み込みそれを望む客の双方が揃わなければ存在しえない高級靴(高額ではなく)市場。

そう考えるとベーメルが偉いというより、客が偉いとも言えちゃいますけどね。


殺し 1


職人言葉には物騒なものが多い。
殺しもその一つだけれど、とても的確なことばだと感じます。

靴業界での殺しと言うのは、靴の中での足の動きを止めること。

サイズの合っていない靴というのはこれができない。
つまりは、器の中で足が踊る状態なので、歩く度にアッチコッチがぶつかってしまう。

足と言う物は関節の塊なので弱い。
鍛えることは可能なのだけれど、それが追い付かないほどの衝撃が歩行によって生じてしまう。(歩行時の衝撃については誤解が生じるので、また改めて記載したい。)


さて、ビスポーク(オーダーメイド)シューズというものは、顧客一人一人の足を綿密に計測して、ぴったり合ったものを提供するという、本来的に正しい靴のことです。
着こなしなどと言う言葉では、どうにもならないのが靴です。
一流じゃなくても本格的にスポーツを志す人ならカスタムオーダーの靴は必須だと思う。

しかしながら、大枚叩いて作った靴が足に合わないという声を、かつては良く聞きました。(大枚と言うのは普通の金銭感覚を持った方には異次元の金額で、クレバリーやらエドワードグリーン、ロブロンドンなどでは30万~50万円あたりが標準というくらいの異次元です。)
近頃見掛けないのは、単に自分が近づいていないだけで、状況が変わった訳ではないでしょう。

それなのに、何故足に合わないか?
いや、合っているのですよ、多分。

但し、それは静止した状態でのことで、歩行時には合っていない。
的確に殺しが効いていないがための結果なのです。


殺しの効きはどんな靴を履いている人でも気にしている筈です。
この場合の殺しとは、前すべりの殺し。


ボールジョイント(ボールガース)/足指の付け根(中足骨の先端部分)
ボールとは母趾球、小趾球のこと

足が前に滑り出して指先が当たってしまうことを防ぐための必須ポイントです。
あっちやこっちの靴サイトでは、ボールジョイント(ボールガース)がぴったり合った靴を選べ!と偉そうに語りますが、私それ違うと思っています。


ジョイント部は緩やかに包む。
そうじゃないと変形しますよ、足が。

ここまで、お話の枕です。
あまりに長いので
殺し 2に続けて書きます。

ロンドンロブ


ロブロンドンのビスポークフルブローグ。

ロブには2種類あると言われている。
エルメスがジョンフルスティック時代のエドワードグリーンフランス工場を買い取って製造しているフレンチロブ。
もう一つがインソックに誇り高く輝くロイヤルワラントを持つロンドンロブ。

でもまったく個人的な見解だけれど、ジョンロブというブーツメイカーはロンドンにあるジョンロブのことであって、エルメスロブはロブではない。
とても良い靴を作るけれども、それはエルメスロブという別の店。
優秀な日本人職人もエルメスロブのアウトワーカーやってたり(もうやってないかな?)、日本人職人も多く在籍したけれど、そんなことは関係ない。

世の多くの人が何と言おうと、ロブはロンドンロブただ一つだ。
ロブでライディングブーツ作ってみてぇなあ。(と無理に単車に繋げてみる)

ヤフオク
ジョン・ロブ ビスポークシューズ 現在額40,500円 -> 52,000円で終了
出品者/浅草コブラーhttp://www.geocities.jp/asaksacobbler/

シューグーは単車修理の万能素材

自分がこれを初めて使ったのは、やたら高いズックを買って、減った底を何とかしようとした時だから30年以上も前の話になる。

やたら高いズックというのはコンバースのオールスターのことなのだけれど、当時地元では1万円を超えていた記憶がある。
周りは980円のテニスシューズという名のズックを履いている時分のことで、とてつもない高価な物でありました。
やたら高いと言えば、トランプ大統領が”BUY L.L.bean!”と吠えるLLビーンのトートバッグ(ボート&トート)は2万近かった。
それが今では・・・。
関税と中国生産いうのは凄いもんだわと思います。

しかし売っているだけマシなもんで、その直前までは通信販売以外の方法で入手不可能でした。
そこに店ができて、よしよし我が中学で1番にコンバースオールスターを履くぞ、来週にでも買いに行くぞと心に決めていた自分の目の前に、輝くオールスターを履く奴が・・・。
仕方ないので初めてジャックパーセルを履く男になってやりましたよ。

で、シューグーの話。
実際の所、靴底に使うにはあまり良くはなかった。
でもまあ、今となっては単車修理に於いてはワイヤーケーブルのブーツ切れなんかにはとても重宝しますね。
目立たず強度もそれなりにある。


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